2014 年9 月、Valerie Phillips（ヴァレリー・フィリップス）の７冊目となる写真集。
この写真集はスウェーデンのアーティスト/ モデルのArvida Byström（アルヴィダ・バイストロム）との4 回目のコラボレーションになります。Valerie Phillips はArvida Byström をここ２年間に渡って撮り続けてきました。出会いは、二人の共通の友人が彼女たちのクリエイティブな関係性を直感的に見抜いて紹介したところから始まりました。しかし、それは簡単な始まりではありませんでした。当時、Valerieはロンドン、Arvida はストックホルムに住んでいました。最初に二人がスカイプで話している時にValerie がArvida に撮影のために飛行機でロンドンに来ないかと誘ったところ、彼女は「それは全然私の頭の中には無かったことだわ」と乗り気ではない返事をしました。しかし、そのやる気の無い返事がValerie を諦めさせることはありませんでした。むしろ、彼女はArvida のその反応を面白く思い、何故か強く惹き付けられたのでした。
最初の交流からその後二人は、Arvida にとって居心地の良い場所であるオンラインで、またはValerie にとって好ましい手段である直接会う、という二つの方法で何度か会いました。二人のコラボレーションは結果とし『Meow』と『A Fantastic Kitten』、『This Is My Drivers License』という三冊のジンを生み出しました。最初のジン『Meow』はArvida がネコが大好きなためそのタイトルが付けられ、ごくわずかな数しか作られませんでした。ある日Valerie は印刷会社からの電話で、Arvida の運転免許証のコピーを送るように、と言われました。それは、ジンの中にArvida のトップレスの写真が写っていたので印刷を始める前に彼女の年齢認証が必要だから、ということでした。その時Arvida は21 歳でした。そして、そのエピソードが三冊目のジン『This Is My Drivers License』のタイトルへと自然とつながっていったのでした。
『hi you are beautiful how are you?』はこれまでの二人の交流の頂点とも言える作品です。本書では、Arvida の生き方が伝わる写真が多く収められており、これまでにも人々とその人の生き方を写真に撮り続けてきたValerie のリアルで生き生きとしたスタイルが存分に表現されています。Arvida はほぼ毎月髪の色を変えますが、髪はめったに洗わず、また90 年代のコミックのような服とキラキラ光るグリッターの
ショートパンツを着て、キャンディのネックレスをつけていて、そして体毛は自然に生えたままで、あなたに大胆にその存在意義を問いかけることでしょう。
二人は、偶然にも正反対であると同時にお互い強く惹き付けられあっているようです。Arvida はインターネット時代に育ち、ブログやタンブラーを作り、インターネットを通じて世界中の友達やファンたちと交流しているいわゆる「ネットセレブ」です。対してValerie は、カメラを通じてモデルの存在感を伝えるために、フェース・トゥ・フェースで直接人々と会うことが好きです。彼女は自身の直感を信じています。
本書にはいくつかの視点があります。ひとつは、真面目だけど面白く、頭が良くとらえ所のない、激しくもあり脆くもあり、フェミニストである、ひとりの女の子のポートレイトです。そしてそれと同時に彼女の、ページからあふれ出てくる個性は、従来の社会が女性に期待する美の在り方や振る舞い、ライフスタイルについて疑問を投げかけます。さらにそれら全てがValerie の秀でたポートレイト写真のスキルとストーリー
テラーとしての表現力を発揮することとなります。
>Valerie Phillips
Longer Moon Farther 2014年刊行 テキスト英語
サイズ縦210×横176mm ソフトカバー112ページ
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