カメラの眼は、わたしの眼より清廉であり、平明であり、冷徹であり、強靭であるように思います。
カメラは、撮影者の思考を視覚化するというよりは、わからないものをそのまま受けとめる、人が意識化できないものをゆっくりとすくいあげることのできる装置として、とてもすぐれているのではないかと感じています。ですので、撮影者であるわたし自身はなるべく透明な存在でありたいと思っています。(原美樹子)
原美樹子はノー・ファインダーで撮影する。被写体を見て撮影はするが、撮影時にファインダーを覗いて像を確認することはない。使用しているのは1930年代製のドイツ製のカメラ「イコンタ(Ikonta)」。1990年代半ばにこのクラシックカメラと出会い、以降この正方形のフォーマットでスナップショットを撮ることが自身のスタイルとなった。軽量で、持ち運びやすく、シャッター音も小さなこのカメラを写真家はいつもバッグに入れて持ち歩き、街角で一瞬すれ違った人々の何気ない姿、出かけた場所で目の前をかすめては消えていく風景や事物をとらえる。たまたま居合わせたその場所で、静かにシャッターを押す。偶然の集積であるスナップショットという技法に賭ける。作品群に留めおかれた一瞬一瞬は、見る者の記憶の断片に共振し、言葉になる前に感情を喚起する。
本書は最近作を含む25点を収録、『hysteric 13: Hara Mikiko』(2005)に続いて2冊目の写真集となる。
>原美樹子
オシリス 2014年刊行 テキスト日本語/英語
サイズ縦270×横210mm ソフトカバー 32ページ
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