写真館を営んでいた両親は、2011年の津波で亡くなりました。生活の場であり、仕事の場でもあった写真館の跡地には、父の使っていたレンズ、泥だらけになったポートフォリオ、私たちの家族写真などが残されていました。それらを両親からの遺言のように感じ、丁寧に拾い集めました。
ある日、私は拾ったレンズで町の景色を撮ってみようと試みました。暗くぼんやりとした画像で、それはまるで亡くなった人たちが見ている景色のようでした。私にはこれらの写真をとることで、死界と現界がつながるように感じるし、二度と会えないであろう両親と対話しているような気持ちになれるのです。
また、拾い集めた私の家族写真は津波のダメージを受けて白くなり、父が撮影した肖像画も画像の多くを失っています。それは町が受けた傷跡や私自身が負った心の傷に似ています。これらの写真の復元を試みることで、両親の遺志をつかみ取ろうとしています。
鈴木麻弓
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>Ceiba
Ceiba 2017年刊行
テキスト: 日本語/英語 サイズ: 縦280×横200mm ハードカバー 104ページ
<絶版、在庫僅少>