"mimiZ"のメンバー福島諭のソロ作品が入荷しました。
蝉の鳴き声を不思議に感じることはこれまでにも何度かあたのだけれど、今年はなぜだか意識して聴いていることが多かった。ある日散歩しながらなぜ気になるのかをあれこれ考えていたが、「どこまでが蝉の鳴き声か」「蝉の声の乾いた質感と温度」「蝉の声の集まりが木の周りの空気をいかほど振動させるのか」等々、いくつもとりとめのない観点が思い浮かんでは消えていった。自然の中に存在している同じ質感の音達は、ひとたび集まればそれひとつ単体で聴いたときとは全く違った様相になる。蝉の声もそうだが、こうしたものは思えばほかにもたくさん存在してもいる。蛙の合唱、街の喧噪、木の葉の擦れる音、さざ波、どれも集まれば単独の時とは別の音の性格へと変化する。では、この個体から集合への音の移行はいったいどの程度の密度から変化するのだろうか。
このCDRに納められた音源はどれも八つという数字によって関 係づけられている。八本のサイン波をそれぞれ独立してFM変調しながら音質を推移させていったもの(トラック一)、また、ある一つのサウンドファイルを八等分し、それらを同時に再生させながら変調させていったもの(トラック二)である。トラック三、四は二〇〇八年九月十四日に新潟市古町の正福寺にて演奏されたライブ演奏をそのまま収録
しているが、基本コンセプトはトラック一と二の方法論とを前半後半に分けて行っている。これら変調される八つの音の集まりは、この夏を通して何度も録音を繰り返された。そこには構成上の変化はあるとしても、しかし変わらない質感はどれにも刻まれていて興味深かった。つまりこうした同質な音の集積においては、細かな構成上の差異などはあまり問題にならないほど、同じ印象を強く保つことができるのではないだろうか。
トラック五は今回トラック二と四で使用された元音源をそのまま収録したものだが、このギターの音の背景にあるホアイトノイズの一部は部屋の窓から聞こえた蝉達の鳴き声である。
<再入荷しました>
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