ベルリンとロサンゼルスを拠点に活動するドイツ人アーティスト Thomas Demand(トーマス・デマンド)の作品集。作者は普段制作したペーパー・スカルプチャーを写真に収めた後、それを壊すことで知られ、その結果として出来た本シリーズ作品には消費されたものの痕跡や、取り残されたものの姿としての残骸が映されている。作者は旅行や散歩の途中で見たものを作品のベースとし、一見ありふれている様でありながら手が届かない世界を描く。撮影されたカラフルな洗濯バサミはロープの上で踊っている様で、日常と錯覚の中間を漂っている。デマンドの作品は観る者を紙で造られた異世界へと誘う。そのペーパー・スカルプチャーの不完全さが実在する物との不一致を目立たせ、現実と写真の関係を複雑にする。デマンドはこのシリーズを俳句の様だという。集められたシンプルな欠片が熟考を引き起こす。日常的な物がデジャヴのきっかけとなり、普通でありながら新しい美しさに気付かされる。
>Thomas Demand
>Mack Books
Mack 2015年刊行 テキスト英語
サイズ 縦210×1800mm ハードカバー 80ページ