参加作家:Antony Cairns(アントニー・ケアンズ), Tiane Doan na Champassak(ティアン・ドアン・ナ・チャンパサック), Olivier Pin-Fat(オリヴィエ・ピンファット), Ester Vonplon(エスター・ヴォンブロン)and Daisuke Yokota(横田大輔)
写真や写真的なプロセスで作られた様々な抽象的(= Abstract)なイメージをまとめた一冊。5人の各アーティストが写真という手法の可能性を模索し、その結果が様々な形で表われている。カメラを必要とせずに、現像の際に必要になる化学薬品と印画紙で実験する者、または身体や自然、街の風景などの全体像から、カメラの接写で断片的な細部を切り取る者など、そのアプローチと可能性は多様に富んでいる。アントニー・ケアンズ(Antony Cairns)は、撮影技術と暗室技術の二つを実験的に使用して夜のロンドンの風景から抽象的なイメージを作り出した。35mmスライドを使用し露出過度で反転させて再び現像することで、アルミニウムの表面上にこだまするような都市の断片を作り上げている。ティアン・ドアン・ナ・チャンパサック(Tiane Doan na Champassak)のはフレッソン・プリントの技法を用いてヌードを接写したシリーズ「Corpus」で構成され、17〜18世紀から伝わる技法と写真的なイメージを結びつけ、特殊な用紙を使用することで豊かな階調と風合いが生まれた。オリヴィエ・ピンファット(Olivier Pin-Fat)の作品は暗室の秘められた大きな可能性と、使用期限が切れしまっていたり、今は手に入れることができなくなってしまった資材を用いた際の予想できない効果に関心をよせたものになった。意図的にコントロールするのが難しいプロセスを用いることで、作者は本来の暗室作業の意味を失うことになるが、思いがけず出来上がる偶発的な抽象のイメージを生み出す場所に拡張することになった。エスター・ヴォンプロン(Ester Vonplon)の自然のイメージは露出過度、露出不足、傷を付けたり、ぼかしたりなどしてテクスチャー、ゆがみ、不完全さが吹き込まれた。それらの自然界の抽象性は、森林が朽ちていく様、雪解けの様子、山の浸食などの、そのもの自体の主題を映し出しているようである。横田大輔(Daisuke Yokota)の抽象的なイメージは、カメラを使用せずに実験的にフィルムへ直接熱と化学反応によって巧妙に作り出されたものである。フィルムの層を利用し、透明性がある色や不透明な様々な色で複雑に作り出されたイメージは、抽象絵画の本質にあるものを想起させる。
>横田大輔
Adad Books 2015年刊行 テキスト: 英語
サイズ縦270×横210mmm ハードカバー 100ページ
※本書は表紙が5種類ありますがランダムに発送させていただきます。