沖縄の洞窟「ガマ」。歴史が眠る闇を見つづけた力作。
バンタからガマの奥底へとマブイたちに誘われるように入っていった。ここは、沖縄の霊魂、祖先、歴史、記憶が宿る神聖な場所。恐る恐る足を踏み入れたガマの中は、ぞっとするような暗闇と重たい空気が漂う。足下には、戦争の残骸が散らばっている。
深い闇に包まれ、何が見えよう。地球の子宮の底で対話はつづく。
シャッターを解放にし、見えないものを求め、懐中電灯を手に私は探る。洞窟内がゆっくりとカメラに沁み込んでゆく。私はイメージのなかを浮遊し、マブイたちとの対話をつづける。
何が聞こえているのだろう。何が彼らのために表現できるのだろう。イメージはどうひとに語りかけるのだろう。
これらの問いかけが私のなかでこだまする。洞窟の闇からスタジオに戻り、霊たちを描きだすために。
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「GAMA」は、闇のなかに眠り続けてきた遺品や遺骨、鍾乳石に刻まれた文字、そして眼には見えないが濃密な気配として漂う「マブイ=魂」との対話の結晶だということができる。(仲里効)
彼の制作行為は「撮る」というような言葉に示唆されるような、捕獲的で瞬発的なものではない。むしろ「見続けること」と呼ぶほかないような、脅迫観念的なまでの想像力への意思をもって対象と相対し続けることだ。(竹内万里子)
中川の画像は自然、時、儀式と歴史の沁みついた特定の場所を見せて、そこでいったい何が起こったのか、見る者に想像力をかき立たせる。彼と同じく私も思うのだが、いまだ消え去ることのない、これら霊魂の宿る場とその様々な過去を、日本人の歴史と意識から遺棄してしまってはならない。(アン・ウィルクス・タッカー)
>赤々舎
赤々舎 2014年刊行 テキスト日本語/英語
サイズ 縦247×横370mm ハードカバー 88ページ