上田義彦: M. River|Yoshihiko Ueda: M. River
出逢うことの歓び。見ることの振幅。
「M. River」は、屋久島に流れる太古の源流を撮影したシリーズです。「Materia」から始まった命の大本(おおもと)を撮影しようという試みは徐々にその姿を変え、命の根源に迫ろうとしています。
「カタチを失い、ぼやけ、光のかたまりとなった水や植物や石は、しかし写真の上で強烈な像として我々の眼前につきつけられている。これは、ただのエフェクトの遊びではない。『観る』ということの客観化、可視化なのだから」(後藤繁雄)
「M. River」に特徴的なのは、写真に欠くことのできないディテールを犠牲にし、その奥に顕われる命、歓喜のエネルギーに集中して向き合う作品です。一方で、同じ場所にカメラを向けながら、ディテールの豊かさ克明さが、異様さを引き起こすような作品も存在します。人が「見る」ということの振幅を、写真によって探求しようとする意欲作。全20点。
Artist Information
1957年兵庫県に生まれ。衝撃的な写真との出会いは、ビジュアルアーツ(大阪校)に入学し、教師であり写真家でもある黒沼康一、百々俊二、中川貴司、村上哲一氏らに独特の写真哲学 を叩き込まれた事により開眼した。その後1980年に福田匡伸氏、1981年には有田泰而氏の助手を勤め、彼らの影響も深く受けた。1982年に独立し、 以後、ファッション写真から始まり、広告写真、コマーシャルフィルムの撮影や演出を行いながら、並行して、数多くの写真作品を撮り続けている。写真にまつ わる全てのこと、撮影はもとより、暗室においての作業が特に好きで、その時間を大切にしている。撮影したフィルムは自ら現像し、プリントも同様に自らが必 ず行う。現在2010年までに出版した写真集は21冊あり、2011年には3冊の新たな写真集の刊行を予定している。代表作品として、アメリカインディア ンの聖なる森を捉えた『QUINAULT』をはじめ、舞踏家・天児牛大を撮影した『AMAGATSU』、自身の家族を写した『at Home』、ミャンマーの僧院を撮影した「YUME」、『ポルトレ』『FRANK LLOYD WRIGHT』などがある。 また広告写真の仕事では、サントリー「ウーロン茶」 「伊右衛門」「BOSS」、資生堂企業広告、無印良品のCF・グラフィックシリーズなどを手掛け、東京ADC賞最高賞、ニューヨークADC賞、カンヌグラ フィック銀賞、朝日広告賞など国内外の数多くの賞を受賞している。 2008年よりParisPhoto等の国際アートフェアに出展、また2010年にはG/P Gallery (東京)、Michael Hoppen Gallery(ロンドン、UK)、 TAI gallery (サンタ・フェ、USA) で「QUINAULT」の個展を開催した。また作品は「Kemper Museum of Contemporary Art 」(USA)、「Hermes International」(FRA)、「Stichting Art & Theatre, Amsterdam」(NLD)などに収蔵されている。
>上田義彦
>赤々舎
赤々舎 2013年刊行 テキスト日本語
サイズ 縦294×横240 厚さ8mm ソフトカバー 58ページ