「チロちゃんは春日部のおばあちゃんとこから生後4ヶ月のときにヨーコ(妻)がもらった。」
--荒木経惟 「愛しのチロ」 1990年
それから22年という長い年月、荒木のモデルをつとめた愛猫チロが2010年3月2日に他界。人間の年齢で言えば105歳という大往生だった。「あんなにオレを愛してくれた女はいない」とチロのことを話す荒木にとって、チロは早世した妻ヨーコに代わり支えとなってくれた、かけがえのない存在であった。ヨーコが亡くなってから20年、再び愛するものを失う悲しみに直面した荒木は、生と死の間を流れ行く日常は「人生という旅」であることを、写真を通して語る。
ヨーコとの最後の時間を描いた写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』(1991年)から20年近くを経た今、荒木は愛猫チロとの最後の時間を綴った写真集を発表する。「写真集は棺桶」であるという荒木にとって、今回の写真集は特別な意味をもつ。「センチメンタルな旅 春の旅」は、チロにとっての旅の終わりでもあり、また始まりでもある。この世での最後を迎えるまで、荒木のためのモデルとして常に最高の表情をみせたチロは、荒木の唯一のミューズ(女神)だったのではないだろうか。
[SOLD OUT]
>荒木経惟
Hysteric Glamour 2010年刊行 テキスト日本語/英語
サイズ縦262×横188 ハードカバー 88ページ