アメリカ人フォトグラファー、レイモンド・ミークス(Raymond Meeks)の作品集。ニューヨーク州中部にある自然豊かなキャッツキル山地に暮らす作者は、バウリー川とキャッツキル川の支流にかかる一本橋を訪れ、幾夏もそこで写真を撮り続けた。その橋の下には、苔に覆われた石灰岩の上を落差20m弱の水流が滝壺に流れ込んでおり、近寄りがたい雰囲気を湛えている。遥か昔からこの場所は地元の若者の遊び場になっており、夏になるとむき出しになった岩や昔の石橋の名残であるコンクリートの土台の残骸のあたりに集まってくるのだった。ほとんどの若者は少し助走して中空にその青白い身を投じ、一瞬そのまま飛んで行くように見えたと思えばすぐに重力に引かれて落下していく。集団的な観点から見ればこの行為は、セクシュアリティの開花や不確実性に覆われた未来など、若者たちが抱えている葛藤に対する祈りが込められた通過儀礼的な側面を持っている。本作には、滝つぼに飛び込む若者たちを物陰から捉えた無数の写真的なエッセンスが凝縮されている。ここにはそれぞれの夏が、「空間」と「人生」の二つの意味で断崖絶壁にいる若者たちの姿として刻み込まれている。
>Raymond Meeks
>Chose Commune
Chose Commune 2018年刊行
サイズ 縦280×横215mm ソフトカバー 144ページ