多様な被写体のもとで時間、光、場所、空間などをサブテーマに作品を展開する写真家・勝又公仁彦の作品集『Right Angle -white next to white-』。
2000年より撮影が開始された「Right Angle」シリーズは、勝又の代表作とされる「Skyline」シリーズと同じく、写真に現れる「線」の問題にフォーカスしたシリーズです。
Skylineが都市を遠方から眺める視点であるのに対して、「Right Angle」シリーズは 3次元世界の面と面が直交する最も立体的な空間(Right Angle=直角)である、建築物のディテールを近距離から切り取った写真により構成されています。そのようなせめぎ合う面と面とによる空間が、写真という平面世界に変換された時、現実の空間での前後関係は不分明になり、境界は線として析出されます。その「Right Angle」シリーズの中から、本作品集は被写体を白い室内空間に限定してまとめられました。切り取られた壁面のコンポジションは、曖昧な陰影のコントラストとざらついた質感のテクスチャーも相乗して、抽象絵画を思わせます。写真が絵画を具象から解放して200年弱が過ぎようとする今、具体物を被写体としながら静謐な抽象世界を作り上げた勝又の作品は他のシリーズと同様に、日常の中で知覚されなかった世界をすくい取り、見る者に新たな認識をもたらすものといえるでしょう。
>勝又公仁彦
>The White
Media Passage 2018年刊行
テキスト: 日本語/英語 サイズ: 縦277×横210mm ソフトカバー 50ページ サイン入り