グリーンランドの北東、スカンジナビア半島のはるか北に、スヴァルバールという群島がある。 ノルウェーの一部だが、北極圏のなかでも北緯80度近い極北に位置し、人が暮らしている土地と しては最も北にある、まさに最北の街だ。当然、夏は光で満たされる白夜、冬は闇に包まれる極夜 となり、冬の最低気温は-30℃以下にまで冷え込む厳しい環境である。
ぼくは撮影のため、このスヴァルバール群島を二度訪れている。一度目は2007年4月のまだ冬が 終わり切っていない時期、そして二度目が2017年6月から7月にかけての夏の時期。10年の時を経て、 二回この島を訪ねた。
夏の北極圏は、ぼくの中にある時間の感覚を狂わせる。何千年という時間の流れと、わずか百年 にも満たない自分の人生と、二十四時間の一日のサイクルと。
ぼくの知らないところでシロクマがアザラシに食らいついている。と同時に、誰かがぼくの携帯電話 を鳴らし、そこでは昼夜を問わず忙しく働いている人がいる。そういう世界に生きていることを、 ぼくは極北の島の上であらためて知る。
>石川直樹
>SUPER LABO
SUPER LABO 2017年刊行 テキスト英語
サイズ 縦290×横223mm ハードカバー 120ページ