ソロ活動、また津田貴司とのデュオ「ラジオゾンデ」などで、自由学園明日館(池袋)、近江楽堂(初台)、haco(葉山)、STARNET(益子)などの場所で、ギター演奏を中心に、空間や場所の響きに重点をおいた活動を展開する青木隼人のソロアルバム。
Echo / Room Echo によせて
杉並の借家で暮らしていた。大家さんの敷地の中にあり、玄関先には大きな棕櫚の木が二本あった。棕櫚の葉は風が吹くとサワサワと音がして、とくに夏場は心地よかった。
家賃は大家さんに直接渡すことになっていて、よほど夜遅くでなければ、居間に通されてお茶をいただくのが月に一度のならわしだった。
大家さんの家には、ピアノがあった。ヤマハのアップライトピアノ。娘さんがむかし弾いていたものだという。
移動と調律の費用をこちらで負担することを条件に、借家で弾いてよいということになり、ピアノはまた息を吹き返した。
ピアノは居間として使っていた四畳半の部屋に置かれ、食事をするテーブルのすぐ横にあるような状態だったが、その分親しみもわき、気負わず弾くことができた。
その頃、展覧会の会場音楽を頼まれる機会があり、さっそくピアノを弾いて録音した。それが「Echo」になった。
それから何年か経って、別の展覧会の音楽を頼まれた。その時は、カセットレコーダーとギター、そしてピアノをつかって録音をした。それが「Room Echo」になった。
どちらも、あの部屋の響きが音に含まれている。
時が流れ、借家から転居することになり、ピアノも元の場所に帰っていった。そして、わたしが出た後に借家は取り壊されることになった。いまは駐車場になっている。
>AOKI, hayato