ここには、イデオロギー的な立場や客観的な報道をめざすいわゆる報道写真家の立場でもない、「市井の一カメラマン」というアマチュア写真家としての態度が貫かれていると言ってよい。それは市民としての写真家と言いかえることもできるだろう。
浜口タカシの市民としての態度は、決して「小市民的」なものではない。「否(ノン)」とはっきりと異議申し立てをすることの正当性を持った市民のものであるのだ。それゆえ、機動隊の暴力に対する学生たちの抵抗や国家権力によって蹂躙されてゆく三里塚の農民たちの生活に対して、浜口は第三者的に事態をみつめることができない。誰がなにをしようとしているのか、国家権力が農民や学生たちに対して、また農民や学生が国家権力に対して、どうしようとしているのかを直感的に見抜き、そしてカメラを持つ自身の位置を主体的に決めて、瞬間的にシャッターを切ってゆくのである。
— 金子隆一「反体制の眼 — 浜口タカシの写真」より抜粋
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Zen Foto Gallery 2016年刊行
サイズ縦257×横182mm ハードカバー 336ページ