世界各国を放浪しながら現在はカナダを拠点に活動する写真家Zun Leeの写真集。
父親の不在は北米、特にアフリカ系の貧しいコミュニティにおいて破壊的な影響を与えている。人口調査統計によると、黒人の子供のうちの2/3以上は、片親の家庭であり主に母親が育てている。こういった事実を背景に、メディアには暴力的、無責任といった黒人の父親のステレオタイプが溢れ、また、これらに対抗するイメージの大多数も、有名人が演じる、いわゆる紋切型の「スーパーお父さん」のような現実とは乖離したものである。
自身も生物学上の父は、母親が彼を妊娠した時に姿を消した黒人あるという作者。本書では、この両極端の間に失われた「父の従来の概念に適合しないかもしれないが、それにもかかわらず、真剣に役割を全うする黒人の父親」の姿を綿密な取材によりドキュメントしている。
自身が子供の頃に経験することができなかった、親密な子育てのシナリオを目撃することで自らのアイデンティティの再構築する作者の視線、それに切り取られた静かな瞬間の美しさが心を打つ1冊となっています。
>Zun Lee
>Ceiba
Ceiba 2014刊行 テキスト: 英語
サイズ 縦209×横306mm ハードカバー 160ページ