「続センチメンタルな旅 沖縄」は荒木経惟により、1971年に限定1000部でリリースされた私家版写真集である。この本は1970年に制作された幻の写真集「ゼロックス写真帖」を除くと荒木とって2冊目の私家版写真集であるため、表紙及び背には「荒木経惟写真集 2」と記されている。表紙には大きく「沖縄」の文字がレイアウトされているが、沖縄の写真は後半に少し出てくるだけであった。新婚旅行が「センチメンタルな旅」のスタートだとすれば、その後に続く新婚生活は当然「続センチメンタルな旅」となるのである。
「センチメンタルな旅 2 」は新宿のとあるバーで、荒木から、この「続センチメンタルな旅 沖縄」を手渡された時からスタートした。荒木からの提案はこうだ。「この本をバラして新たな本を作ってみたらどうか」。これはスーパーラボの新しい写真集シリーズ ”SUPER LABO 32” への参加依頼に対する荒木からの答えであった。
通常、写真集は作品や画像を元に製作されるものだが、今回は本から本を作るのである。これが正真正銘の 複写 である。タイトルは荒木自ら「センチメンタルな旅 2」と命名した。我々は託された事の重大性を深刻に受け止めながらも任せてもらえた喜びに打ち震えた。
32のシリーズでは全体のボリューム(判型、ページ数)、予算などが明確に決められているが、我々は定められたルールの中で出来うるベストを模索するため、今回に限り予算という縛りを外すこととした。「センチメンタルな旅」というタイトルは我々にとって、又、日本写真史において途方もなくスペシャルなものなのである。
編集・デザインは中島英樹。荒木とその作品を良く知る数少ないデザイナーであり日本を代表するグラフィクデザイナーの一人である。制約が多い中での仕事は時として困難を極めるものだが、反面、素晴らしい結果に結実する時がある。中島はそれを我々にさらりと提示して見せた。複写(スキャニング)したイメージ、シークエンス、紙のセレクトや印刷は個々の作品の持つ意味を十分理解した上、考えに考えた末に完成させたものであり、単なるグラフィック上の処理では断じてない。ダミーを見た際の荒木の満足げな表情がそのすべてを物語っている。
荒木のスタイルを踏襲して限定1000部のリリースとした。
>荒木経惟
>SUPER LABO
SUPER LABO 2015年刊行 テキスト英語
サイズ 縦280×横216mm ソフトカバー 32ページ
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