石川竜一第三弾!
『絶景のポリフォニー』『okinawan portraits 2010-2012』につながる
衝迫と混沌の初期作品。
20代前半の日々、夜を裂いて走る暴走族やクラブでのシーン、性に向かう扉。
鬱屈しつつも考えつづける仲間との時間――。
孤独と閉塞。乾きと希求。
夜闇の深さのなかに生の疼きと匂いを探る、石川竜一の原点。
誰のなかにもある抑えきれない衝動や溢れ出るものを生々しく見つめる一冊。
adrenamix
夜闇に開かれた口
母の声に跨がって
走り抜ける翳たち
皆無の森に響く千鳥足
突き刺さる哲の
轍
吹きこぼれた泡が地にしみ込む前に
ケツで感じる孤独
迷うことも出来ないほど
閉ざされた奇妙な国に
散乱した全ての蛇行眼球は
飛び込む川も見つからない
軽快な乾きが
沼地のように湿った身体を求め
硬直した肉体の山脈
峠を流れる汗のつぶを掬い上げるように
その筋に舌を這わせる
辿り着く前には既に愚劣さを知る
中毒的生産の果て
意志を持たない石ころは
勃起する睾丸の理不尽さを
更に無意味で上書きするために
男たちは鼓動を白く濁らせ
女たちは春を飛び越え
夏の夜で笑う
夜は明けずとも夜というか
扉は開かずとも扉か
闇は照らされても闇のままだ
転んで破れた心臓からは
命の声が溢れ出し
それでもまだ静寂
蛍光灯の陳列棚に並べられた
レトルトの時間を食い漁りながら
アスファルトの上を這いつくばり
沈んでいく月を持て余す
どんなに酔っていても
酒の入った瓶を叩き割ることは出来ない
垂れ流される記憶と
二日目に野獣の迎え
>石川竜一
>赤々舎
赤々舎 2015年刊行 テキスト: 日本語/英語
サイズ 縦128×横182mm ソフトカバー 120ページ