見過ごされていく「素」のものごとの中に風景を見出し続ける写真家、羽田誠。「鳥は泳ぐ」「脈々 in vein」に続く三冊目の作品集「Baumkuchen(バウムクーヘン)」が完成しました。足を止めた景色の中で出会ってしまった、きれいな悲しさと残念なおかしさをいくつか。初めて触れるものがもたらす親しみと、見慣れたものに感じる断絶という相反するイメージの数々をとらえた、静かに挑発的な一冊です。撮らなくてもよかったかもしれないものが撮られている。なぜ撮ったのかわからないけれど、理由を聞かなくてもいいと思える写真がある。そういう写真に出会うと嬉しくなる。そう伝えると彼は笑ってうなずいた。「いつも思っているのは『見慣れた景色』とか『見飽きた風景』。誰もが見慣れたものの中にある、小さな違いや矛盾や歪みを撮りたくて」対象との距離を注視すること。とらえたいものは即物的でいて、手に取ることはできない。ただそこにある「普通」とそれに向けられたまなざしとが、一定の距離で佇んでいる。
>羽田誠
HIROI Publishing 2015年刊行
サイズ縦270×横220mm ハードカバー 80ページ
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