2014年に発表した手製写真集「Red String」が、Paris Photo-Aperture Foundation Photobook Awardsの最終選考や、TIME誌の選ぶ年間ベスト写真集の一冊に選出されるなど各国で高い評価を得た写真家、藤井ヨシカツ写真集。
2015年に開催されたReminders Photography Strongholdでの展示に併せて刊行。
「兄弟は他人のはじまり」という故事がある。血を分けた兄弟であっても、それぞれ成長し独立すると疎遠になって他人同士のようになっていくという意味だ。友人ならどんなに親しくても何かのきっかけでソリが合わなくなり、音信不通になることはある。しかし家族の場合、関係性がどんなに細くなってもそれが切れることはない。だからこそ余計に面倒なのだ。
家族だからついきついことを言ったり、余計なアドバイスをしてしまったり。家族だからこれ位は許されるだろうという感覚が、両者の間に取り返しのつかない深い溝を作ることになりかねない。両親の離婚も、そうしたことが積み重なった結果だったのではないだろうか。そう感じて以来、私は家族を他人だと考えてみるようになった。
それは他人行儀に振る舞うということではなく、相手に合わせるよう意識して行動するということ。もしも家族が赤の他人だとしたら、こんなことをするとどう思うだろうと自問し、むやみに干渉しないという意味だ。
自分の正直な感覚からすると、相手を大事にしているとは感じられない、とてもまずいやり方のように感じてしまうこともある。しかしこうすることで、家族皆が自分と同じように矛盾した気持ちで家族に向き合い、葛藤し、それぞれの中に違った家族像が出来上がっていることがわかってきた。ここに至って、ようやく家族のはじまりが見えてきたようである。
>藤井ヨシカツ
Self Publishing 2015年刊行
サイズ縦420×横297mm ソフトカバー