LAを拠点とし、2013年にはNY・MoMA PS1(ニューヨーク近代美術館)で企画されたグループ展 “New Pictures of Common Objects” に参加したアメリカ人アーティスト、Lucas Blalock(ルーカス・ブレイロック)の作品集。本作では18ヶ月間にもわたって撮影された作品がまとめられ、その膨大な量から一枚一枚の写真が到達点なのではなく「デジタルを前提とした環境で写真を撮るということは何を意味するのか」という問いに対するブレイロックの思考の痕跡であり、それぞれが出発点なのだということが伝わってくる。ロンドンを拠点に作家、キュレーター、アーティストとして活動するDavid Company(デイヴィット・カンパニー)との対談を収録(別冊)。
---今では、多様な人がカメラという道具そのものについて理解しているだけでなく、ますます多くの人が画像のデジタル加工に使われるツールに関しても理解し始めています。画像を制作する意味の大きな部分を占めるのは、こういった写真に関する鑑賞者と(特に)自分の先入観に圧力をかけ、写真の諸条件の再構成を試みることだと思っています。『Windows Mirrors Tabletops』収録対談より
---ブレイロックの作品は、見る者を戸惑わせる。一見、日常にありふれている物の静物写真にも見えるのだが、決定的な違和感が残る。その違和感の正体は、あまりにも無造作に残されたデジタル加工の痕跡だ。世の中に溢れている画像の多くがデジタル加工を施されているのは、見る側にとってもはや常識となっていると言っていい。幾多の雑誌の表紙を飾るグラビア写真が「お化粧」されているのは、公然の事実だ。だが、それでも写真とその後の加工はあくまで「透明」であろうとする。単純にカメラが捉えた画なのだ、と。ブレイロックは、この写真が制作される過程を「不透明」にする。スタジオ、カメラ、デジタル加工ツールといった、通常は「舞台裏」とされる部分を、敢えて見えるように写真に残していく。アナログの大判写真をスキャンし、デジタル加工してから再度印刷してつくられる彼の写真は、何らかの対象を「記録する」だけでなく、作家自身の撮影行為や、さらには写真が制作されたツールや条件そのものの「記録になる」のである。
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Morel Books 2013年刊行 テキスト英語
サイズ縦250×横200mm ハードカバー 238ページ David Companyとの対談(別冊)付
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