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有田泰而: First Born | Taiji Arita: First Born


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上田義彦 赤々舎

1960年代後半〜1970年代半ばにかけて、写真家 有田泰而によって撮られた傑作「First Born 」は、「カメラ毎日」編集者 山岸章二に見出され連載として発表されるも、その後有田泰而がアメリカで没する2011年まで再び世に出ることはなかった。本書は、有田泰而の構想した写真ノートをもとに、弟子であった上田義彦が編集、再プリントして刊行の運びとなった。

「First Born」は、第一子の誕生を契機に、妻ジェシカと息子コーエンを撮り続けたシリーズである。作品として被写体に向き合うと同時に、有田は徹底して親子三人による「遊び」としてもとらえており、カメラの前のさまざまなパフォーマンスが生み出す表現からは独特なユーモアとエロティシズムが感じられる。「カメラ毎日」の中で紹介された「有田夫人ジェスさん」の言葉は以下のようなものである。

「このシリーズはわたしたちふたりにとってたいへん貴重な経験です。お互いのコミュニケーションがよくいっているときには、ほんとにいい写真ができる。しかし問題はどんな写真ができたか、というだけにとどまりません。これはそのままわたしたちの人生(生活)に対する問いかけのようなものでもあります」(「カメラ毎日」1974年5月号)

親子の間にあるコミュニケーションと関係性は、徹底した演出の世界の中にも、自由奔放な風通しのよさと力強い存在感を感じさせる。モノクロームの官能的な美しさとともに、「First Born」は今もその卓越した瑞々しい感性を私たちに届けてくれる。本シリーズから68点の写真が、東京都写真美術館にパーマネントコレクションとして収蔵された。
>赤々舎
赤々舎 2012年刊行 テキスト日本語/英語
サイズ 縦294×横240 厚さ15mm ソフトカバー 168ページ
  • 3,630円(税込)