1970年代後半から 90年代初頭にかけて、国内外の都市でストリートスナップを撮影してきた北島敬三は、 1992年、白いシャツ姿の人物を継続的に撮影する「PORTRAITS」と、無人の風景を撮影する「PLACES」という新しいシリーズをスタートさせ、同時並行で制作を続けている。初期の「PLACES」では、東京、ロンドン、ニューヨーク、香港など世界の大都市が中心的な撮影地に選ばれ、どの都市にも共通して見られる均質な都市風景が写し出されており、都市をグローバリズムのスペクタクルとして捉えようとする作家の姿勢がみてとれる。ところが 90年代終盤からは、日本国内の都市で撮影された写真が、さらに近年では、山村や離島など、都市と対極にあるような場所が多くを占めるようになる。この変化はグローバルな均質性の表出からヴァナキュラーな差異の表出へと「PLACES」の主題が入れ替わったのではなく「顔と名前を失った風景」に作者の関心が移って行ったことの表れと言える。
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RAT HOLE GALLERY 2012年刊行
サイズ縦252×横214mm ハードカバー 96ページ
[SOLD OUT]