「Juvenile」は、夏のウクライナで4000kmもの旅の果てに、綿谷が偶然出会ったティーンエージャ
ーたちを、数年にわたって撮影したカラー写真によって、構成されている。
幼年期から成人期へのつかの間しか見ることができない少年/少女の複雑な表情を写し出してい
る。仲間たちとふざけ笑いあう時も、憂いた目でまっすぐにこちらを見つめる時も、完全な成熟を
迎える手前の彼らの瞳は、若さが発揮する限りない可能性と、大人の世界に裏切られることへの恐
れとを持ち合わせている。
幼少期を過ぎたジュヴナイル(年少)の時代を生きる彼らを、綿谷は「外」からやってきた観察者と
して、時にユーモアや憂愁を交えながらとらえている。川辺での遊びを真剣に生きる彼らの姿は、
遠くは離れたところにあっても、綿谷にとって、またわたしたちにとっても、密着的に近い存在なの
である。
ジュヴナイルという言葉には、「幼鳥」という意味も込められている。夏の日差しのなか戯れるティ
ーンエイジャーを写し出すと同時に、いずれは「巣立つ」彼らと綿谷の写真は寄り添い、一緒に戯れ
るかのようでもある。
今年3月に写真集「CHILDHOOD」を発表したばかりの綿谷修。被写体や手法を変え
ながら意欲的に制作を続ける彼の作品に、今後も目が離せない。
>綿谷修
RAT HOLE GALLERY 2010年刊行
サイズ縦231×横187mm 126ページ