ゲスト・キュレーターに世界的に注目を集める写真史家ジェフリー・バッチェン氏を迎え、写真の歴史でしばしば見過ごされてきたような、日常的な写真にスポットライトを当てた、日本ではじめての本格展覧会「時の宙づり―生と死のあわいで」展カタログです。
写真が持つ様々な魅力や可能性のうち、本書では特に「写真が生と死の間で被写体を“宙づり”にし、過ぎ去りゆく時間の流れに被写体が打ち勝つことを可能にする能力」を探求しています。日本人になじみの先祖の遺影もそのような能力と無縁ではありません。ヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、オーストラリア、日本といった世界各地の作例をたどりながら、ヴァナキュラー(ある土地に固有の)写真の魅力を紹介します。さまざまな文化圏における死生観や、時間の概念、肖像のもつ意味の違いをも浮き上がらせます。
「スナップ写真の影」(撮影者の影がうつり込んだスナップ写真)もまた、本書の中で、時を宙づりにする写真がもつ能力の重要な例として紹介されています。
テキスト:ジェフリー・バッチェン、甲斐義明、小原真史
>NOHARA
IZU PHOTO MUSEUM/NOHARA 2010年刊行 テキスト日本語/英語
サイズ縦210×横148mm ハードカバー256ページ