ソロ活動、また津田貴司とのデュオ「ラジオゾンデ」などで、自由学園明日館(池袋)、近江楽堂(初台)、haco(葉山)、STARNET(益子)などの場所で、ギター演奏を中心に、空間や場所の響きに重点をおいた活動を展開する青木隼人のソロアルバムが入荷しました。
<解説>
二〇〇九年の秋。画家・藤川孝之さんのアトリエで、このCDは録音されました。青木隼人さんのギターを聴きながら、藤川さんが紙に向き合い絵を描きます。その絵を見つめながら、青木さんがイメージをふくらませて、さらなる音を奏でる。こんなふうに、絵と音の会話が繰り広げられていったそうです。その話を伺っていたからか、初めてこのCDを聴いた時、まず最初に何も描かれていないまっさらなアイボリー色の画紙が目に浮かびました。次第に紙の上にさまざまな表情の線が描かれてゆき、聴き終わった後に、音の線で描かれた、一枚の素描画が目の前にあるような気がしたのです。
私自身、工房で物を造る時には、いつも青木さんの音楽を聴いています。青木さんの音には、脳の深いところにある無意識を感じさせてくれる「何か」が存在していると思っているからです。青木さんの音に促されながらイメージを探り、その「何か」を感じたとき、音は意識から消え去り、手が夢中で動き始めます。しばらくして手が止まると、また音が聴こえはじめ、自分自身に存在する「何か」を作り出す勇気を与えてくれるのです。私にとって、青木さんの音楽は、創造に欠かすことの出来ないものだと思っています。
音の素描画。このCDにも、創造に必要な「何か」がたしかに存在していると感じます。これからも、物を造るときには、この音を聴きつづけることでしょう。
井上由季子(グラフィック工芸家)
>AOKI, hayato