深瀬昌久の写真集。
本書は、1991年にInter Press Corporationより刊行された写真集『家族』の新装版である。深瀬の実家の写真館で撮影された家族の肖像写真を撮影年順に収録。これは単なる家族写真の形式に留まらなず腰巻きひとつを身につけた半裸姿の妻や様々な女性モデル達を迎え入れては深瀬の手によって撮影が継続された。定点撮影されることによって家族の年々の変化が精密に確かめられ、それは一家族の歴史の断片を物語る記録として成立するが、その一方では随所に深瀬が仕込んだ虚構が混じる。こうして出来上がった奇妙な家族写真について深瀬が「三代目くずれである私の、パロディー」と言い表していることからも分かるように、家族写真に相応しくない要素を混入させることによって伝統的な家族写真の形式を皮肉ることも目的のひとつであった。
深瀬家を巡る撮影は5年にわたって続けられた後に中断されるが、1985年に深瀬の父・助造の年老いた姿がきっかけとなって再び開始された。その2年後に迎えた父の葬儀の日にも撮影され、1989年に深瀬写真館が廃業を迎えた日、すなわち家族四散を迎えた日を最後に完結した。当初こそ伝統的な家族写真のパロディとして軽快に撮影が開始された本作は20年近く月日をかけて撮影されることによって、結果的には一家の栄枯盛衰を残酷なほど克明に記録するものに仕上がった。
>深瀬昌久
>Mack Books
Mack 2019年刊行 テキスト: 英語
サイズ: 縦310×横230mm ハードカバー 96ページ