アメリカ人アーティスト、ルーカス・ブラロック(Lucas Blalock)による作品集。バーチャル・スペースの境界をシフトさせることに着目した作者は、作品集としてこれまでに試されたことのなかったAugmented Reality(拡張現実)に取り組んだ。彼の新作となる写真群は、それぞれのイメージがスマートフォンやタブレットのアプリを通してアクティブ化され、AR技術による音、3D効果、アニメーションによって、これまでになかった写真体験を提示する。
紙面のイメージをデバイスの画面上にスキャンすると、イメージは変形をしたり、フレームを超えて引き延びては途端に消え、視覚的な連想や想像を刺激するようなインタラクティブな動作を繰り広げる。
まるで辻褄の合わない体験は、何が現実であり、何が現実で起こっていないことであったか、読者に違和感を想わせる。
縦33cmの画面いっぱいにイメージが配され、分厚いボード紙のページからなる本作は、幼児向けの絵本に倣ったフォーマットで構成されるが、そこにもまたブラロックの意図が含まれる。絵本が色や数字や形を通して、幼い読者に彼らを取り巻く世界に慣れ親しんでもらうことを目的とする一方で、本作はバーチャルと実体の2つの要素の合成によって、あらゆる年代の読者をオンラインとオフラインのはざまにある新しい世界に引き込ませる。
今日のデジタル時代では、イメージにまつわる環境も新たな技術革新と共に常に変化を続けている。既にイメージをどう読むかでは事足りず、イメージとどう生きるかを学ぶことが必要とされる地点に差し掛かっているのではないだろうか。
2016年、Self Publish, Be Happyからのコミッション・ワークとしてTate Modern(イギリス)にて開催された同名のインスタレーション開催に合わせて刊行。
>Lucas Blalock
>Self Publish, Be Happy
SPBH Editions 2016年刊行
サイズ縦330×横210mm ボードブック 18ページ