風景のなかに現れる巨大な妊婦の愛と問いかけ
写真家 馬場磨貴は、自身のホームページなどで被写体となる妊婦さんを募集し、ヌードのポートレートを撮影してきました。そして、「ある日、街を歩いていてふと空を見上げると、ビルの間から巨大な妊婦さんが現れました。その日から公演や線路の向こう側...いたるところに彼女たちは姿を見せました」(馬場の言葉より)。妊婦さんが宿す生命の力や揺らぎが、身のまわりの風景と交わったところに、このシリーズ「We are here」は誕生したのです。
うららかな春の公園や海辺、高層ビルの狭間、ドームの背後、そして福島や広島にも巨大な妊婦さんたちが現れます。思い思いの姿で風景に溶け込み、呼吸し、私たち人間の存在へ優しく、ときに憂いを帯びた眼差しを向けてくれたりもします。巨大な妊婦さんは、その大きさや力でもって何かを傷つけたりするでしょうか? 生まれたままの姿で丸腰である彼女たちは、戦ったり破壊したりすることなく、ただこの世界に存在しているのです。
そして、雑踏や路地の物陰にふと等身大の妊婦さんを見るとき、その無防備で弱さを湛えた姿にはっとさせられます。命は、生と死を同時に孕むものであることを、その陰りから思い起こされます。
「We are here」は、生きる力に貫かれた妊婦さんたちのシリーズであり、またこの地上に存在する私たち皆の姿でもあります。風景は美しく愛おしく、そして切実な痛みをもって目の前にあります。巨大な妊婦さんの解き放たれた姿を折々に仰ぎ見ながら、私たちはある安心と指針を得るのかもしれません。
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赤々舎 2016年刊行 テキスト日本語
サイズ 縦238×横302mm ハードカバー 108ページ
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